ウルトラマラソン完歩のお話【碇高原 山上り編】
丹後100kmウルトラマラソン孤軍奮闘記の続きです。
50キロ~60キロにかけて、第2関門通過できました。
(実はどこに関門があるかも気にしていませんでした・・・ところが・・・このあたりから関門があと2箇所もあって、このままのペースだともしかすると突破できないかも?という不安が頭をもたげてきます)
今までの上り下りで膝はボロボロになっていました。
今回はそれにも増して、脛・腰にも少しづつですがダメージが出てきている様子。
足指はまだ何とかもっている。
(シューズをワンサイズ大きくしておいて大正解!)
しかしながら、下りで足がやられていることは確かでした・・・。
今までのアップダウンでこの調子でした。
しかし、しかし、60キロ~80キロにかけて、高原まで山を登り降りするという想像したことのない経験をするのです。
どれくらいの勾配を上るのか?また下るのか?未知の世界だったのでした。
走れない・・・。「歩く」と決断します。
歩くといったって、10キロ(上り分)も歩いたら間に合わんやろ。。。
歩くって1キロどれくらいかかるんやろか・・・。
想定していないことがどんどん頭をよぎります。
少し頭の中で計算してみました。
一歩おそらく50cmとして計算して、1km=1000m=100000cm
100000/50=2000歩
2000歩×0.5秒=1000秒=16.6分!!!ありえん!!!
一歩80cmとして計算して、
100000/80=1250歩
1250歩×0.5秒=625秒=10.4分 これだけかかるのかあ・・・涙
とまあ、考えながら足をひたすら前に出し続けているのでした。
このころの1キロは8分台後半です。
今でもそれくらい違うのかいな。。。いったいどないなることやら。
いよいよです。
手前では沿道の応援の方から「いってらっしゃい!」との声も
未知の世界です。
【碇高原(いかりこうげん)】
丹後半島のほぼ中央の山間に開けた碇高原には、京都府農林技術センターの牧場があり、隣接してステーキハウスやキャンプ場などのレジャー施設も整っています。
冬は積雪により交通の問題がありますが、春は新緑、夏は避暑、秋は紅葉と、美しい自然を求めて訪れる人々で賑わいます。
(観光HPより)
遊びで行きたいもんです。走るところではありません。
少し進むと、延々と続く上り坂を行く手をさえぎります。
我々の時間帯でチャレンジしている人は正直誰一人として走りきれません。
先程の計算していたことを思い出しながら
「や・ば・い」「や・ば・す・ぎ・る」
とあせりに変わりました。
また、上り坂で座り込んでいる人、寝転がって諦めかけている人・・・。
これが10キロも続くのか・・・
このときの心境を冷静に思い出そうとするのですが、曖昧になってしまいます。
ただ、心折れそうになるものの、自分の中では
「ここで最後まで進まないことには、もう一度チャレンジしないといけなくなる」
という勝手な恐怖心が芽生えてきたことは覚えています。
(そんなこと、自分の勝手なんですが・・・笑)
人間不思議なもので、いろいろ考えるともがけるもんなんですね。
私はあの看板まで走ろう。そして、1分歩いてから、またあの目印まで走ろう。
これを繰り返してもがいていました。
あるとき、歩いている人を抜いたのですが、その方から
「すごいよな・・・、こんなところで走ろうとするんだものな」
と言われとき
うれしさより、涙が出そうになっていました。それは辛さからでした。
どうせこちらは歩いたら、また抜かれる・・・。
そんなことより、峠はまだか・・・。
TI-TANの方が前方に見えてきました。
【TI-TAN:このウルトラマラソンをなんと10回も完走した方=「鉄人の称号」だそうです。】
あれ、同じように苦しんでいる・・・。
しかし、後から背中を追いかけていると私と全く違うことがありました。
「この人、全く諦めてない・・・」
必死で前に向こうと隙あらば走る、ほんの20歩程度だけれど走る、また前を向いて歩く、また20歩程度走る・・・。
これらを繰り返していたのでした。
よし、この人にくらいついていこう!としばらくは必死にくらいついていきます。
鉄人が走れば、こちらも20歩程度と決めて走る(といっても歩幅は80cm程度です)、鉄人が歩けば、あわせて歩く。
背中を見ながら、少しづつ前進していきます。
山を登る、トンネルを抜ける、休憩所では水を頭からかぶる・・・。
おそらく1時間半は軽くかかったかと思います。(実際は10キロ100分もかかってしまいました)
広い高原が目の当たりに!
横で併歩していた若いお兄さんに
「もう、上りは終わったんですか・・・」
「私も初めてなんですが、おそらく・・・」
峠を越えることができたのでした。